| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-06  (Oral presentation)

一般化線形モデルによるデータ解析:交互作用項の存在は回帰係数の意味を変える 【B】
Data analysis by Generalized Linear Models: presence of interaction term changes the meaning of coefficient 【B】

*粕谷英一(九州大学)
*Eiiti KASUYA(Kyushu University)

生態学などでは、主な関心の対象である変数(目的変数、応答変数)に対して1つではなく複数の説明変数が影響していることを想定したデータ解析がよく行われている。分散分析、重回帰、ロジスティック回帰、分割表の分析、カウントデータの回帰などを含む一般化線形モデル(GLM)でも、複数の説明変数を使うことは多い。複数の説明変数があるとき、ある説明変数が目的変数に与える効果が、他の説明変数の値に依存するかもしれないという状況は生態学などではよく見かける。そのような、ある説明変数の効果の、他の説明変数への依存性を量的に表すのが、統計的方法で言う交互作用(interaction)である。交互作用に対して、元の説明変数自体は主効果(main effect)と呼ばれる。
 一般化線形モデルなど広い意味での回帰では、説明変数の係数は分析の結果として得たい情報の中心であり、係数が正か負かあるいはゼロかどうかなどの検定や係数の信頼区間を求める区間推定等がよく行われる。交互作用の項がないとき、元の説明変数自体すなわち主効果の変数の係数は、その説明変数の目的変数に対する効果の大きさを表す。では、交互作用の項があるときも、主効果の係数は同様の意味を持つのだろうか?
交互作用の項があるときには、説明変数の目的変数に対する効果の大きさは他の説明変数の値によって異なる。主効果の係数は、交互作用項の相手である他の説明変数の値が特定の1つの値をとるときの、説明変数の目的変数に対する効果の大きさであって、他の説明変数がそれ以外の値の時の効果の大きさを示さない。この点で、交互作用項の有無により、主効果の係数の意味には大きな違いがある。交互作用項があるときにも、交互作用項がない時と同様の意味付けを、主効果の係数に対してしてしまったときに、起こりうる誤りについても検討する。


日本生態学会