| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-04  (Oral presentation)

相模湾江の島沖大陸斜面の水深100-300 mにおける水中ドローンを用いた生物相調査
Biodiversity research with an underwater drone on the continental slope between 100 and 300 m depth off Enoshima Island, Sagami Bay, Japan

*八巻鮎太(新江ノ島水族館), 伊勢優史(琉球大学), 今原幸光(国立産総研), 岡西政典(東京大学大学院), 櫛田優花(鹿児島大学), 小枝圭太(東京大学総合博), 駒井智幸(千葉県立中央博物館), 高岡博子(沖縄美ら島財団), 西田和記(かごしま水族館), 野中正法(沖縄美ら島財団), 柳研介(千葉県立中央博物館), 杉村誠(新江ノ島水族館), 伊藤昌平((株)FullDepth)
*Ayuta YAMAKI(Enoshima Aquarium), Yuji ISE(University of the Ryukyus), Yukimitsu IMAHARA(AIST), Masanori OKANISHI(Grad. Sch. Sci., Univ. Tokyo), Yuka KUSHIDA(Kagoshima University), Keita KOEDA(The Tokyo University Museum), Tomoyuki KOMAI(Nat. Hist. Mus. & Inst., Chiba), Hiroko TAKAOKA(OCF), Kazuki NISHIDA(Kagoshima City Aquarium), Masanori NONAKA(OCF), Kensuke YANAGI(Nat. Hist. Mus. & Inst., Chiba), Makoto SUGIMURA(Enoshima Aquarium), Shouhei ITO(FullDepth Co.,Ltd.)

 相模湾は沿岸から深海まで広く生物相調査が進められている海域で、世界的にみても多様性が高いことで知られている。2000年代初頭に国立科学博物館の主導で行われた相模灘の生物相調査では、魚類無脊椎動物合わせて21種の新種が発見されるなど、130年を超える研究史を経た近年でもなお数多くの新知見が見出されている。
 また相模湾は大陸棚が狭く、急激な大陸斜面が水深1000 mを超える相模トラフまで続く特異な海底地形を有し、特に深海生物の宝庫として注目されてきた。1800年代後半には江の島沖や沖ノ山堆などからオキナエビスガイ、コトクラゲ、ホッスガイなどが採集され、珍種として記録されている。近年では無人探査機を用いた調査で初島沖や沖ノ山堆など数か所の深海底においてシロウリガイ類やハオリムシ類を中心とした化学合成生態系が発見されている。
 一方で、前述の初島沖など一部を除き、深海底が直接観察された海域はほとんどない。そこで今回は300 m級水中ドローンDiveUnit300を用いて江の島沖の水深約100 mから300 mに位置する大陸斜面の海底の様子を直接確認することを目的とし、映像解析を中心に生物相調査を実施した。
 2020年3月から2021年3月にかけて、釣り船「でいとう丸」と、300 m級水中ドローンDiveUnit300を用い、江の島沖南西約7 kmに位置する水深100-300 mのポイント周辺で調査を行った。5日間で13潜航行い、合計約960分の潜航映像を得た。そこからはっきりと確認できる生物を中心に、9動物門163種類を出現生物としてリストアップ、局在や行動を記録した。さらにその記録をもとに、頻出する海綿動物、刺胞動物、クモヒトデ類、甲殻類、魚類を中心に、できるだけ詳しく分類学的検討を行った。結果、原記載以来79年ぶりの記録となるコトクラゲを確認した他、ジンケンエビ属1種、クロシタナシウミウシ属1種、2種の未記載種と思われる生物を確認した。
 本研究は相模湾の生物多様性における当海域の新規性と重要性を改めて示すものとなった。


日本生態学会