| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-01  (Oral presentation)

食糞性コガネムシの腸内DNAのNGS解析と哺乳類モニタリング手法の開発
NGS analysis of intestines DNAs of coprophagous scarab beetle and development of mammals monitoring

*吉田直樹(豊島区), 岸茂樹(農研機構)
*Yoshida NAOKI(Toshima-ku), Shigeki KISHI(NARO)

 食糞性コガネムシ類(以下フンチュウ)は主に哺乳類の糞を餌として生活をしている。オオセンチコガネ、センチコガネ、カドマルエンマコガネ、フトカドエンマコガネ、クロマルエンマコガネ、コブマルエンマコガネは本州全土に広く生息しており、ベイトトラップで比較的簡単に多くの個体を採集できる。これらのフンチュウの腸内にはその糞餌の元となる哺乳類のDNAが残存しているのではないかと考え、本研究ではその残存DNAの検出に基づいた哺乳類のモニタリング手法の開発を目指した。フンチュウを用いたモニタリング手法は希少種や害獣など多くの哺乳類に活用できると考えられる。
 そこで講演者の身近なフィールドである千葉県において分布を拡大しているシカ科の侵入種キョンを、フンチュウを使って検出することを試みた。キョンは特定外来生物に指定されていることに加えて、農作物への被害や生息域の拡大が問題となっている。また同地域にニホンジカも生息しているため糞塊調査による密度推定も難しい。本研究では、まずベイト糞がフンチュウに食べられにくく、また付着もしにくいトラップを開発し、2021年に千葉県房総半島にてフンチュウを採集した。採集した前述の5種類のフンチュウの腸内容物からDNAを抽出・精製した。キョン、シカに対する特異的プライマーを開発し、フンチュウ腸内DNAを鋳型としてPCRによるシカ、キョンDNAの検出を試みた。また次世代シーケンサーを用いて、フンチュウ腸内容物由来DNAのショットガンシーケンスを行った。これらの結果を報告するとともに、効率的な検出方法について議論する。


日本生態学会