| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-05 (Oral presentation)
コクチバスは北米原産の外来生物である.本種は特定外来生物指定種にも拘らず,密放流が後を絶たず,国内で河川を中心に生息水域を急激に拡大している.これまで,本種の繁殖生態の研究などは湖沼での研究が中心であり,河川において研究が行われた事例は少ない.そこで本研究では,定着と再生産が確認されている京都府の木津川において,コクチバスの繁殖生態を解明し,駆除に資する知見の集積および駆除の効率化への提言を目的として調査を行った.調査は木津川の新木津川橋から大河原大橋までのうち,9エリアを対象とし,2021年3月20日から7月20日にかけて行った.結果,計64床の産卵床が確認された.初確認は4月8日であり,産卵開始の目安とされる15℃を超え始めたタイミングであった.産卵床の最終確認は6月29日で,水温が産卵終了の目安とされる23.5℃を超えた数日後であった.そのため,木津川における産卵期は4月上旬~6月下旬であると考えられ,水温15~24℃の期間であった.木津川においてコクチバスの産卵床は流速3.9±5.1 cm/s(mean±SD)の止水および低流速環境,水深80.4±26.0 cmの比較的浅瀬,岸からの距離4.13±3.33 m(mean±SD)の岸近くに形成されており,底質は砂利(2 – 16 mm),小礫(17 – 64 mm),中礫,(65 – 256 mm)の利用割合が比較的高く,特に小礫をよく利用していた.また,カバーを利用する頻度が有意に高く,消波ブロックや橋脚などの人工的な構造物をよく利用していた.本研究において,産卵期の前半は卵や産卵前の状態で発見される例が多く,後半になるにつれ,仔魚で発見される例が多かった.これは水温の上昇に伴い浮上までの日数が短くなったためであると考えられる.そのため,産卵期後半は同じような頻度で調査を行っても調査者が発見するまでに孵化および泳出してしまう可能性がある.そのため,取りこぼし無く駆除を行うためには産卵期前半よりも後半に駆除頻度を高くする必要があると考えられる.