| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-06  (Oral presentation)

吉野川紀の川におけるコクチバスの生息状況と効果的な採捕方法について 【B】
Habitat condition and effective capturing of small mouth bass Micropterus dolomieu in Yoshino-Kinokawa River 【B】

*殿河拓実, 柏原淳英, 浅倉純平, 河内香織(近畿大学)
*Takumi TONOGAWA, Atsuhide KASIHARA, Jyunpei ASAKURA, Kaori KOCHI(Kindai Univ)

吉野川紀の川におけるコクチバスの生息状況と
効果的な採捕方法について
近畿大学 殿河拓実
 2020年の研究により奈良県吉野川において特定外来生物コクチバスMicropterus dolomieuが生息していることが確認された。コクチバスは強い肉食性を示し、吉野川の特産品であるアユや様々な在来生物を捕食するため水産業、水域生態系への悪影響が懸念される。本研究では2021年に吉野川紀の川の全長34kmの区間でコクチバスの捕獲調査を行い生息状況を確認した。また、様々な捕獲方法を検討することでコクチバスを効率的に捕獲することを目的とした。コクチバスを捕獲するにあたり、成魚は浅瀬では投網や刺し網を用い、深場ではルアーやミミズを用いた釣りを行った。稚魚は地上から目視した後、手網や投網で捕獲した。捕獲した個体は外来生物法に基づき現地で適切に処置を行い、その後体重と体長を計測した。消化管内容物等の解析も行ったが、本研究では生息状況と採捕方法について報告する。4月から12月まで計17回の調査を実施し、体長14.5mm~410mmのコクチバス318個体を捕獲した。捕獲した地点は奈良県下市町・下渕頭首工、五條市・大川橋付近、和歌山県橋本市・橋本橋周辺、岸上ワンド群、紀の川市・名手西野付近であり、いずれの地点でもコクチバスの生息を確認した。捕獲数が最も多かった方法は刺し網であり、次いで投網、手網、釣りの順となった。本年度の調査でコクチバスが広範囲にかなりの数生息しており、成熟した個体や稚魚も確認されたことから吉野川紀の川では再生産が行われており、生息に適した環境であると考えられた。有効な捕獲方法として生後2週間程度までの個体には手網、以降の個体には投網、刺し網が考えられた。特に手網、刺し網は在来魚の混獲が少なく捕獲に適しているとみられる。また釣りは水深の深い地点に生息する個体の捕獲や、警戒心の高くなっている個体を陸上から狙う際に有効な方法となるだろう。


日本生態学会