| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-07  (Oral presentation)

佐賀平野におけるチュウゴクスジエビの侵入及び定着状況
Invasion and establishment status of Palaemon sinensis in Saga Plain

*岡本聖羅, 徳田誠(佐賀大学)
*Seira OKAMOTO, Makoto TOKUDA(Saga Univ.)

外来種の侵入定着は生物多様性を減少させる主要な原因の1つであり、在来生態系に深刻な影響を及ぼす場合もある。佐賀平野には河川やクリーク、溜池などの多様な水環境が存在し、絶滅危惧種や地域固有種を含む水生生物が多数の生息していることから、生物多様性の保全上きわめて重要な地域である。スジエビをはじめとする水生甲殻類は、豊富なバイオマスから、淡水生態系における食物網の主要な構成要素となっており、地域の生態系において重要な地位を占めている。近年、外来種チュウゴクスジエビが国内の淡水生態系に侵入し、在来種と置き換わる現象が報告されている。本研究では、佐賀平野におけるチュウゴクスジエビの定着状況を明らかにすることを目的とし、城原川水系から嘉瀬川水系にかけて調査を実施した。城原川水系と嘉瀬川水系の河川やクリーク、溜池23地点を対象に、2020年11月に広域調査を実施した。このうち、スジエビが確認された9地点を対象に、2021年1月から12月にかけて定期調査を実施した。また、在来スジエビを対象に、遺伝子解析により繁殖様式を判別した。在来種と外来種の両方が確認された地点では、水面と水底にトラップを設置して生息場所を比較した。調査の結果、当該地域でチュウゴクスジエビが確認されなかったのは溜池1地点のみであり、両者が混在する地点でも外来種の方が優占していた。混在する地点の一部では、水面付近に外来種が多く水底付近に在来種が多い傾向が見られた。毎月の体長の推移と抱卵個体の確認時期から、チュウゴクスジエビは春に1回繁殖していると考えられた。遺伝子解析の結果、在来スジエビは繁殖期に淡水域に留まるAタイプのみが確認された。河川やクリークといった連続した水域ではチュウゴクスジエビが急速に広がり、在来スジエビとの置き換わりが進んでいると考えられた。


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