| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-01  (Oral presentation)

インターネットオークションにおける過去12年間のニホンザリガニの売買状況
Trading status of Japanese crayfish(Cambaroides japonicus) in the past 12 years at Internet auctions

*田中一典(北海道大学大学院), 照井滋晴(NPO環境把握推進NW)
*Kazunori TANAKA(Hokkaido Univ.), Shigeharu TERUI(PEG, NPO.)

  近年インターネットオークションを介して希少種の売買が盛んに行われている。その中でニホンザリガニの取引が急増している。本種は環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に選定されている日本固有種である。そこでインターネットオークションにおける本種の売買実態を明らかにし、懸念される問題や今後の課題を考察した。
  調査は、国内最大のオークションサイト「ヤフオク!」に出品された野生ニホンザリガニについて2010年~2021年までの12年間の実売個体数、落札価格、出品者数、出品地域などを調べた。
  その結果、年間の実売個体数は2010年~2017年まで440個体~743個体で推移していたが、2018年は1569個体と倍増した。2019年~2020年は減少傾向にあったが、2021年は2401個体と急増した。年間の落札合計額は、年々増加傾向にあり過去最高であった2020年の約370万円が2021年には約757万円と倍増した。出品者は2010年~2019年まで3~13であったが、2020年は26と倍増し、2021年は29と更に増加した。出品地域は北海道が圧倒的に多いが本州からの出品もある。出品時期は、北海道からは年間をとおして出品され、2020年10月~2021年3月にかけて本州方面からの出品が急に増えた。月別の実売個体数は、実売価格が高い抱卵個体や受精個体が採取される時期の3月~6月と9月~12月に多くの個体が売買されている。また、マニアに人気の高い青色や白色の個体は季節に関係なく高値で売買されている。
  外来ザリガニ類の販売規制などが強化されたことにより、規制のないニホンザリガニに取引が集中する恐れがあり、今後も実売個体数、落札価格、出品者の増加傾向は続くと推測される。そして販売目的の乱獲者の増加による生息地の攪乱や個体群への悪影響が懸念される。生息地や個体群の消失に繋がらないよう早急な対策が求められる。


日本生態学会