| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-02 (Oral presentation)
陸域と海域の二つの生態系を繋ぎ,我々日本人にとって伝統的にも非常になじみが深いニホンウナギ(Anguilla japonica)。しかし現在,シラスウナギの乱獲や生息域の劣化に加え森里川海の繋がりの脆弱化等がニホンウナギを絶滅の危機に追い込んでいます。我々の研究目的は,ニホンウナギの資源量の回復に加え,流域圏における生息適地を保全し,また河川における移動環境を復元する事です。そして一連の活動の先には,ウナギ類を含む多くの絶滅危惧種の存在と人間の社会活動とがしなやかに調和した「自然共生社会」の実現を目指しています。
本発表では生態系モニタリング技術である環境DNA(eDNA)分析とGIS解析にも触れ,その二つの技術の融合が流域圏研究において発揮する有効性について解説します。研究対象地は,1991年以降ニホンウナギの生息地が急激に変化したと考えられる西日本と瀬戸内海流入流域圏(以下,瀬戸内海地域)です。
今回発表する流域圏におけるウナギ類資源回復のための研究アプローチは主に次の3 点です。
1)ウナギの生息状況に関する最新の実態把握と有効なモニタリング技術
の確立。
2)資源量の減少要因の分析と具体的な適応策の検討。
3)先のニつの知見を基礎とした流域生態系の保全・復元のための具体的
な施策提言。
本研究では,過去に実施された魚類調査結果(1991-2002年実施;自然環境保全基礎調査・河川環境データベース)とeDNA分析の結果(2017-2019年実施)を比較してGIS上で地図化しました。その結果,生息地情報の無い「eDNA分析=陰性」の地点が今回新たに複数地点発見されました。これらの地点ではこの期間内に何らかの生息地環境の変容が起こり,ニホンウナギが棲み難くなっている可能性が示唆されました。