| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-03  (Oral presentation)

淡路島におけるチドリ類をフラッグシップ種とした地域主体の海岸保全の取り組み
Seashore conservation featuring two species of plovers as flagship species by local residents in Awaji island

*立田彩菜, 藤原道郎(兵庫県立大学)
*Ayana TATSUTA, Michiro FUJIHARA(University of Hyogo)

“チドリ”は兵庫県の淡路島でシンボル的存在であり、特にシロチドリは島内で周年見られるチドリ類として親しまれてきた。島内でのシロチドリの生息数は1969年から1990年にかけて減少傾向であったが、絶滅危惧種Ⅱ類,兵庫県RDBでAランクに選定されて以降の調査は行われておらず、最近の生息状況は不明であった。そこで今回、シロチドリの生息・繁殖状況解明を目的とし、島内の海浜における越冬個体数調査をシロチドリを対象に、繁殖期の調査をシロチドリとコチドリを対象に行った。その結果、越冬個体数は1969年に比べ約3割に減少し,島内最大の生息地では36から0になっていた。繁殖地の調査では発見したシロチドリ4巣、コチドリ3巣のうち、孵化はコチドリ1巣のみでシロチドリの孵化率は0%だった。いずれも外敵による捕食などにより消失したと考えられた。観察の結果から、島内の砂浜でのチドリ類の繁殖には営巣と採餌のための砂浜と雛の休息地となる海浜植生が必要であることが明らかになった。チドリ類の調査と並行して地元向けの勉強会や観察会を開催したところ、地域住民から地域資源として保全したいという要望が相次ぎ、チドリ類は保全活動への関心と参加を高めることが期待される種=フラッグシップ種となることが示唆された。そこでチドリ類をフラグシップ種とし、チドリ類の保全を通じて島内全体の豊かな自然海浜の保全を目指すことを目的とし、地元主体の保全グループの立ち上げを行った。チドリが淡路島の資源であること、チドリの保全が海浜全体の保全につながることを強調してグループへの参加を呼びかけた結果、島内の主要な生息地6か所および地域不特定で、11の個人・団体のグループへの参加と、10の個人・団体の活動への協力体制が得られた。今後、保全グループを中心に、生息状況の調査結果をもとに各浜の状況に合わせて構築した保全プログラム実施していく。


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