| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-04 (Oral presentation)
半自然草原は全国的に面積が減少し、多くの在来の草原性植物が絶滅の危機に瀕している。残存する草原であっても、草原性植物が多く生育する場合や外来種が多く生育する場合があり、場所によって種組成が異なる。このような種組成の違いをもたらす要因を明らかにすることは保全上重要である。本研究は、草原群集の種組成に対する環境要因および植物の形質の影響を明らかにすることを目的とした。
2019年に千葉県北西部に残存する26か所の草原で植生調査を行った。地点ごとに19コドラート(1×1m)を設置し、種ごとの出現頻度を集計した。除歪対応分析(DCA)によって得られた地点および種の第1軸のスコアを抽出した。その際、種の共通性が他と著しく異なる1地点は分析から除外した。環境要因は土壌特性(土壌pH、硝酸態窒素量、水分量)、草刈り管理の有無、農地や宅地の開発を免れた期間、調査地周辺の土地利用(宅地・農地・草原・樹林の割合)とした。周辺の土地利用は主成分分析により、宅地と樹林の勾配を表すPC1と、農地と草地の勾配を表すPC2に集約した。植物形質は寿命、草丈、種子散布様式、開花期間、種子重量、花粉媒介様式とした。地点のスコアと環境要因、種のスコアと形質の関係を明らかにした。また、種のスコアと草原性植物および外来植物の関係を解析した。
解析の結果、第1軸は草原性植物の豊かさと正の相関、外来種と負の相関がみられた。環境要因の土壌pH、硝酸態窒素量、宅地率は第1軸と負の相関、未開発期間と土壌水分量とは正の相関があった。つまり土壌が弱酸性、貧栄養、湿潤であり、周辺に多くの樹林が存在し、未開発期間が長い草原においてスコアが高かった。第1軸は多年生植物と正の相関、重力散布植物と負の相関を示した。本研究は、土壌特性、過去の土地利用、周囲の土地利用が特定の種子分散様式や寿命の長さを持つ種の存続に影響することで種組成の異なる草原が成立することを示した。