| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) I04-01 (Oral presentation)
時系列に基づく因果関係解析手法は、大規模データ時代の生態学において、データ、モデル、仮説検証を結びつける要として期待される。湖沼の長期的なモニタリングデータは、こうした新し時代の生態系データ解析に一つの課題を提示する。生態系は様々な生物、物理、化学プロセスの複合システムであり、生態系モニタリングデータの取り扱いは、既存の時系列ベースの因果推定手法では困難である。本講演では、人工ニューラルネットワークを中核に組み込んだ機械学習フレームワークである”EcohNet”を紹介する。この手法は、生態系の構成要素が持つ予測可能性を成分分解することで、要素間の関係を定量化する。水圏メゾコスムと食物網シミュレーションの長期観測データに基づくベンチマークから、本手法が相互作用の検出性能において従来の手法を上回り、時系列の動的特性の違いに対して頑健であることが示された。また、湖沼の長期モニタリングデータに本手法を適用した結果、生態系の健全性や生態系サービスへの深刻な脅威となるシアノバクテリアブルームの要因について、解釈可能の高い新しい結果が得られた。EcohNetの性能は、その予測能力によって保証されており、湖沼生態系の構成要素全体のリアルタイム予測も実現する。