| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) I04-04 (Oral presentation)
人工林を管理・伐採する際には、木材の収穫量や収支を見積もるための材積量の事前調査が欠かせない。しかし広域で把握を行う場合、労力とコストがかかり現地調査の調査範囲は限定され、全体での推定に誤差も生じる。近年ドローンを用いて樹高・DBHの推定や樹種識別が可能であることが明らかになってきており、特にレーザーを使用しないデジタル画像からの推定は低コストな調査手法として期待されている。そこで本研究ではドローンのデジタル画像から各樹木の検出・樹種識別・樹高・DBH・幹材積の推定が可能なディープラーニングを搭載した森林解析用GISソフトを開発し、その精度検証を行った。調査は日本製紙株式会社の保有する静岡県社有林のスギ・ヒノキの混生する人工林約10haを対象地とし、デジタルカメラを搭載しているMavic 2 proを飛行させて上空から画像を撮影した。SfMソフトにてオルソ画像・DSM・DTMを作成し、それらデータをもとに、開発したGISソフトにて各樹木の推定を行った。また現地ではスギ・ヒノキの林分に半径15mのプロットを2つ設置し、DBHの計測及びレーザー距離計による樹高測定を行った。結果、全58本のうち55本の検出に成功した。また樹種識別の精度は89%であった。樹高の推定精度はスギ・ヒノキでそれぞれRMSEが1.37m、0.99mであった。DBHのRMSEは6.39cm、7.65cmであり、現地調査データで推定式を構築した場合3.88cm、3.32cmまで減少した。また幹材積は0.49m³、0.36 m³の誤差となり、現地の推定式のDBHを用いた場合0.27 m³、0.19 m³となった。以上の結果から、開発したGISシステムを用いることで樹木の検出・識別及び樹高推定が高精度で可能であり、DBH、幹材積は現地の調査をもとに推定式を構築することで特に高精度で推定できることが分かった。以上より、開発したGISシステムを用いることでドローンのデジタル画像から高精度に各樹木の幹材積情報の推定が可能であり、林業での低コストな調査手法として利用可能性があることが示された。