| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) I05-01  (Oral presentation)

生き物好きが創る現代の生き物文化〜魚部カフェ・バイオフィリアの事例など
Modern creature culture created by creature lovers-Examples of Gyobu Cafe Biophilia, etc.

*井上大輔, 工藤雄太(NPO北九州・魚部)
*Daisuke INOUE, Yuta KUDO(NPO Kitakyushu / Gyobu)

 今回の発表では、「生き物好き」「現代の生き物文化」に着目してカフェ形式の街中空間を創出する魚部カフェを主な事例として実践報告したい。
 従来の生き物文化としての自然資源の日常的な利用は、現代の日本社会の多くの人とは無縁になった。一方で、生き物との関わりはかつてないほど身近で多様な面がある。自然環境の厳しい現状が喧伝される中で、保全保護や教育、採集飼育、あるいは雑貨制作や収集等々、科学的・学術的・公的な関わりから趣味的・愛好的・私的な立場での生き物への関心や行動まで多種多彩に同居するのが、現代の生き物との関わりの大きな特徴だと言えるのではないか。
 魚部ではこの多種多彩な関わりを現代版の生き物文化として捉えようとする。魚部自身の活動理念や内容を再点検する中で、「生き物好きによる現代ならではの生き物文化」が存在するのではないかと考えるに至った。そして「出版」「田んぼ」「希少淡水魚」「サンショウウオ」「ヒメドロムシ」「希少種保護条例」などをテーマにした取組を、生き物文化に関するプロジェクトとして意識しながら進めているところである。そのプロジェクトの一つが「拠点つくり」である。魚部という場を生き物文化のハブとして捉え、その具体的な拠点として魚部カフェを位置付けた。
 日常的に人が訪れる場を考え、カフェ形式とした。遠近問わず、生き物好きを引き寄せる「装置」を目指した。2019年12月開業のこの装置には、4つの独自の仕掛けがある。生き物図書専門のブックカフェ、盛口満氏の原画ギャラリー、地元の水生生物展示、生き物雑貨屋がそうである。開業当初から各地の研究者や専門家を招いてのサイエンスカフェを始め、2020年夏には「どじょう丑の日プロジェクト」を立ち上げ、ウナギ資源枯渇と食文化の面から問題提起を続けている。開業から1年半の来店状況を分析しながら、この取組のもたらす効果を考えたい。


日本生態学会