| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-021  (Poster presentation)

行動圏とその周辺地域を含めた最大利用範囲の推定:ニホンザルの事例 【B】
Estimation of the maximum utilization area including home range and peripheral sites 【B】

*寺山佳奈(高知大学・院・黒潮圏), 海老原寛(WMO), 清野紘典(WMO), 加藤元海(高知大学・院・黒潮圏)
*Kana TERAYAMA(Kochi University), Hiroshi EBIHARA(Wildlife Management Office), Hironori SEINO(Wildlife Management Office), Motomi GENKAI-KATO(Kochi University)

野生動物の保護や管理には、日常的な利用範囲である行動圏に加えてその周辺地域を含めた最大利用範囲の推定が重要である。野生動物の利用範囲を調べるためには、動物の位置情報が必要となる。調査期間や調査頻度が増加するとともに、位置情報の地点数(サンプル数)は増加する。一般に、サンプル数が増加すると推定される利用範囲(面積)は大きくなるが、やがて飽和する。本研究では、サンプル数に対する利用範囲の増加(サンプル数-面積曲線)を漸近曲線で近似してニホンザルの最大利用範囲を推定した。先行研究での漸近曲線は、サンプル数に対して累積的に増加する利用範囲として描かれている(累積法)。しかし累積法では、推定される利用範囲は調査を開始する日にちや季節などに大きく依存することから、確率的な影響を受けやすい。これまでのシミュレーション研究では、確率的な影響を減らすために複数回試行して得られた結果を平均化することが多い。本研究では、元のデータから特定のサンプル数を複数回抽出して面積を平均化する事によって、サンプル数-面積曲線を描いた(平均法)。平均法では、開始日やサンプル数の変化に対して最大利用範囲の推定値は累積法に比べると安定していた。累積法で最大利用範囲の推定値が大きくばらついたのは、開始日を含む位置データが、動物の行動や気象などの環境条件に関連する予測不可能な影響を受けるためであると考えられる。平均法を用いることで、これら確率的な影響が減少し、安定的な最大利用範囲の推定値が得られることが示された。


日本生態学会