| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-032 (Poster presentation)
Gause (1934)は2種のゾウリムシ類 (Paramecium caudatum と Paramecium aurelia) を用いて競争実験を行い、競争排除を初めて実証的に報告した。この研究は、現在においても群集生態学の基礎であり続けている。その後にPark (1948)、Uchida (1953)など競争排除則を支持する研究が異なる種群でいくつか報告されたが、それらで見られた排除の中には、その要因が繁殖干渉であることが報告されているものがある。しかし、ゾウリムシ類において、未だ繁殖干渉について検証した研究は見当たらない。ゾウリムシ類で見られた排除の直接的な要因について再検討する必要がある。その前段として、本研究ではゾウリムシ類2種(P. caudatumとParamecium tetraurelia)の培養条件について、特に餌資源に注目し検討した。
4種類の培養液を用いて、2種ゾウリムシ類の個体群動態を調べた。培養液として、植物抽出液でバクテリアを培養したもの(大麦若葉抽出液+Klebsiella aerogenes、または大豆抽出液+Bacillus subtilis)を抽出液ごと希釈したものと、標準液体培地で培養した細菌(K. aerogenes または B. subtilis)を洗浄した上で生理食塩水に懸濁したものを用いた。これら4種類の培養液で3系統のゾウリムシ類それぞれを1週間単独培養し、3日後、5日後、7日後の個体数を計測した。その結果、生理食塩水にバクテリアを懸濁した培養液では、どの系統のゾウリムシ類もほとんど増殖しなかった。一方、植物抽出液を含む培養液では、ほとんどの系統で著しい増殖が認められた。Gause (1934)で記載された培養液は本研究の細菌懸濁液に近いが、この培養液が競争実験に適しているとは考えられなかった。