| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-041  (Poster presentation)

仙台湾砂浜海岸における節足動物の分布パターンとその季節変化について
Spatial and temporal variations in the distribution pattern of arthropods on the sandy beach of Sendai bay

*内田健太郎(東北大学・理・生物), 柚原剛(東北大学・生命), 鈴木碩通(東北大学・理・生物), 市毛崚太郎(東北大学・生命), 占部城太郎(東北大学・生命)
*Kentaro UCHIDA(Tohoku Univ. Dept. Biology), Takeshi YUHARA(Tohoku Univ.Life Science), Hiromichi SUZUKI(Tohoku Univ. Dept. Biology), Ryotaro ICHIGE(Tohoku Univ.Life Science), Jotaro URABE(Tohoku Univ.Life Science)

砂浜海岸は、汀線から陸に向かって砂浜帯や植生帯など、異なる環境帯が形成される。このような環境構造に応じて動物群集も空間的に変化していくと考えられるが、その詳細についての知見は必ずしも十分でない。宮城県では仙台湾を囲むように砂浜海岸が発達しているが、そのすべての海岸で東日本大震災を契機に高さ7.2mの防潮堤が建設された。このような防潮堤が砂浜海岸動物群集にどのような影響を及ぼしているかは不明である。そこで本研究では以下の仮説について検証した。(1)汀線から離れるにつれ海域に依存した種から陸域に依存した種へ優占種が変化する。(2)海・陸それぞれの依存種の分布が重複することで砂浜中央部の種多様性は高くなる。(3)防潮堤はこのような空間分布パターンを寸断する。
調査は2021年5~10月に仙台湾の荒浜海岸(汀線から防潮堤まで110m)・閖上海岸(同200m)で実施した。汀線から陸側へ防潮堤を跨ぐように3本のライントランセクトを設定し、ライン上に一定間隔でピットフォールトラップを設置することで徘徊性動物を採集し、同定・計数を行った。動物群集の空間構造はHorn指数を用いた多次元尺度法で可視化し、種多様性は種数およびShannonの多様度指数で評価した。防潮堤の影響は季節ごとに調べ、地点間での非類似度指数を応答変数とし、地点間距離、防潮堤を挟んだ位置関係を説明変数とし距離行列重回帰分析を行った。
解析の結果、砂浜海岸の動物群集構造は、汀線からの距離によって変化していたが.種多様性は、仮説に反して砂浜の中央部で減少していた。このような海岸動物群集の空間的な変動は季節的な変動よりも大きいことが分かった。さらに、群集空間構造に対する防潮堤の影響はほとんどの季節でみられ、防潮堤の海側と陸側では群集構造が有意に異なることが分かった。


日本生態学会