| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-044 (Poster presentation)
群集の動態や種間関係を理解するためには種間のニッチを比較することが重要である。特に食性は動物のニッチを大きく規定することから栄養ニッチを明らかにすることが重要であるが、日本の中型食肉目群集において同所的に栄養ニッチを評価・比較した研究は限定的である。本研究では冷温帯に同所的に生息している食肉目(タヌキ・キツネ・テン)の食性を比較することで栄養ニッチの違いを明らかにすることを目的とした。2019年2-3月、2020年1-11月、2021年4-11月において、山形県庄内地方の森林や農村景観で各種の糞サンプルを採取した(冬季間のタヌキは採取無し)。季節ごとに各種20個の糞サンプル(但し秋季のキツネは17サンプル)を洗浄し、残渣を用いてポイントフレーム法により出現頻度(%)、相対出現頻度(%)、平均占有率(%)を算出した。併せて、洗浄水からミミズの毛の有無を確認した。また、相対出現頻度を用いて栄養ニッチ幅(食性幅)及び種間の食性の類似度(ピアンカの重複指数)を算出した。テンの糞を分析した結果、春に哺乳類と昆虫類、夏に果実、昆虫類及び哺乳類、秋に果実と昆虫類、冬に哺乳類が主に出現し、キツネの糞からは春に哺乳類、夏に昆虫類と果実、秋に果実と哺乳類、冬に哺乳類が多く出現した。また、タヌキの糞からは春と夏に昆虫類、果実及び葉、秋に果実と昆虫類が主に出現した。食性幅は種間・季節間で異なり、3種間ではテンが最も小さく、春から秋の間では3種で共通して秋に最小となった。種間の食性の重複指数は季節によって異なり春のタヌキにおいて最も小さい値を示した。一方、他の季節において3種の食性は類似しており、夏に昆虫類、秋に果実、冬(タヌキ除く)に哺乳類が共通して多く出現したことから重複指数は高い値を示した。本発表ではさらに糞サンプルを分析し、餌カテゴリーごとに季節間及び種間で比較し、3種の食性幅の違い及び栄養ニッチ分割について議論する。