| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-047 (Poster presentation)
土壌生態系の中でトビムシは個体数・種数ともに多く、有機物の分解に大きな役割を果たしていることが知られている。また、環境の変化に鋭敏に反応するため、森林の生物多様性や健全性を測るうえでの指標生物として高く評価されてきた。しかし、これまでの研究の多くは土壌層および落葉層に着目しており、森林内に豊富に存在している落枝に生息するトビムシに関する知見はほとんどない。落枝は、多くの樹木において恒常的に起こっている部分的な枯死であり、大小さまざまな枯死材として絶えず林床に供給される。そのため、トビムシにとって落枝は、落葉と同様に餌資源や生活空間として機能していることが期待される。そこで本研究では、これまで注目されてこなかった落枝に着目し、土壌層、落葉層および落枝に生息するトビムシ群集に違いがあるのかを調べた。調査は関西地域の広葉樹林4地点で行った。各調査地において土壌層、落葉層および落枝をそれぞれ100 ccずつ各地点で5回(合計60サンプル)採取した。また、落枝は直径3±1 cmのものを選択し、腐朽段階は中期に統一した。採取後、ツルグレン装置でトビムシを抽出し、種レベルで同定・計数を行った。そして各基質のトビムシの群集に違いがあるのかを非計量多次元尺度法(NMDS)を用いて比較した。また、Shannon-wienerの多様度指数を用いた多様度の比較も行った。その結果、土壌層、落葉層および落枝で異なる群集を示した。また多様度を比較したところ落枝で高い値を示した。これらの結果から、落枝は土壌層およびリター層とは異なる群集を有し、加えてより高い多様性を有することが示唆された。