| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-049  (Poster presentation)

岩礁潮間帯固着生物群集の時間変動性に与える地形の影響
The effect of coastal topography on temporal variability of rocky intertidal sessile assemblages

*新井慧(北海道大学環境科学院)
*Satoi ARAI(Hokkaido Univ.)

沿岸地形は、岩礁潮間帯における固着生物の幼生、胞子などの物質流入を決定する重要な要因の一つである。地形要因は季節性や水温などの環境要因と比較して、その状態が変化するのに長い時間を要するという特徴を持つ。したがって地形要因は他の環境要因とは異なる形で、生物群集に対して影響を与えている可能性がある。これまで、砕波帯の距離、波への露出度、固着基質などの地形要因が、固着生物の個体群や沿岸海水中のプランクトン濃度に与える短期間の影響が評価されてきたが、10年以上の長期間かつ、生物群集に及ぼす影響は評価されていない。本研究では、岩礁潮間帯固着生物群集を対象に、北海道東部の太平洋沿岸の9海岸45岩礁ごとに、沿岸地形が群集の時間変動性に与える長期的な影響を明らかにすることを目的とし、(1)岩礁潮間帯固着生物群集は砕波帯幅が長いほど被度と種組成の時間変動性が低下する。(2) 岩礁潮間帯固着生物群集は固着基質の凹凸度が高いほど被度と種組成の時間変動性が低下する。という二つの仮説を検証した。対象海岸における各岩礁の潮間帯において固定調査方形区を設置し、2010年から2021年の夏の固着生物の被度を測定した。得られたデータから固着生物群集の被度の変動係数と、種組成のBray-Curtis指数を求め、これを群集の時間変動性とした。また、各岩礁から潮間帯までの距離はGoogle Earthの衛星写真から画像解析によって求め、固着基質の凹凸度は直線距離に対する凹凸も含めた距離との比率によって求めた。時間変動性に対して、地形要因が与える影響を統計解析し、仮説を検討した。解析の結果、いずれの時間変動性に対しても地形要因は有意な相関を示さず、仮説は支持されなかった。現時点で解析に用いた独立変数では仮説は支持されなかったが、さらに解析を進めた結果も含めてポスターにて発表する。


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