| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-053 (Poster presentation)
観測から種間相互作用や生物と環境との相互作用を推定することは、生態系の理解において重要である。近年、非線形時系列解析の知識を用いることで、観測時系列からデータ駆動的に時系列同士の相互作用を推定する手法が提案されている。非線形時系列解析よる相互作用の推定は事前に時系列の変動メカニズムが決定論的なルールがあるという仮定のみで利用可能で、幅広い時系列に対して使用可能な手法である。しかし、非線形時系列解析による相互作用の推定手法は、個体数などの定量性がある時系列を必要とする。したがって、観測により非線形時系列解析を用いて時系列から種間相互作用の推定をするには、複数の生物種の個体数を定期的に定量する必要がある。一般的に生物の個体数の定量にはコストがかかるので、定期的に複数生物種の個体数を定量したデータを得るのは難しいことが多々ある。そのような場合でも定量的ではない生物の在不在のような定性的な時系列が得られる場合がある。
本発表では個体数に比べると取得が比較的容易な生物の在不在の時系列データに対しても適応可能な相互作用の推定方法を開発した。具体的には在不在時系列の在不在の出現パターンや定量的な時系列の増減パターンに着目することで、時系列同士の依存関係を推定する手法である。この手法は在不在時系列同士の相互作用だけではなく、在不在時系列と定量的な時系列を推定できるという利点がある。本発表では、人工時系列に対して今回発案した手法を利用することで、ノイズに対する推定の頑健性や在不在を生み出すメカニズムの違いによる推定の頑健性を検討する