| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-054 (Poster presentation)
近年、生物の分布や資源利用などを説明し得る種間相互作用として、繁殖干渉が注目されるようになった。繁殖干渉とは、種間配偶などによりメスの適応度を減少させることである。従来の研究では、オスが異種のメスを交尾相手だと誤認することで至ると想定されてきた。Sexual cannibalismを行う動物では、メスの誤認がオスにとって高いリスクになりうるが、そのような動物種間でも繁殖干渉が生じうるのか検証した研究例はなかった。
外来種ムネアカハラビロカマキリ(以下ムネアカと略称)Hierodula sp.の侵入が生じた複数地域で、在来種ハラビロカマキリ(以下ハラビロ)Hierodula patelliferaの排除が報告され、繁殖干渉が疑われている。本研究では、sexual cannibalismが生じる場合でも繁殖干渉が成立し得るのか、ハラビロカマキリ類を対象として検証した。
操作実験により種間における配偶・交尾行動を観察した。ケージ(415×405×325mm)内に異種ペアを導入し、最大3日間行動を観察した。Sexual cannibalismまたは種間交尾が起きた場合は観察を終了した。
その結果、種間交尾は全てオスがメスに捕食されてから起きた。オスは捕食された際に、食べられながら身体の向きを変えて交尾器を伸ばし、種間交尾に至った。種間交尾をしたメスの多くは交尾器の損傷をきたし、死亡した。なお、同種ペアについて同様の観察を行った場合、オスがメスに捕食されてから交尾を成立させる場合と、オスからメスの背に飛び乗って交尾を成立させる場合の、2通りが観察できた。また、同種同士の交尾では、メス交尾器の損傷は生じなかった。以上の結果から、ハラビロカマキリ類における繁殖干渉は、メスによる異種オスのsexual cannibalismに端を発すると結論付けられた。