| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-056  (Poster presentation)

琵琶湖北湖における大型トンボ類の羽化殻分布と環境要因の関連について
Relationship between distribution of large dragonfly exuviaes and environmental factors in North Lake Biwa

*奥田達也(滋賀大学大学院), 石川俊之(滋賀大学)
*Tatsuya OKUDA(Grad, Shiga Univ.), Toshiyuki ISHIKAWA(Shiga Univ.)

琵琶湖は国内で分布が限られるメガネサナエ属2種(メガネサナエ、オオサカサナエ)の重要な産地である。琵琶湖北湖は、砂浜湖岸や山地湖岸など多様な湖岸を有することが知られている。トンボ類は、幼虫の時期を水中で過ごし、羽化を湖岸で行うなど、水陸移行帯を含めた水域と陸域両方を幅広く利用する。北湖に生息するトンボ類の分布は、偏りが生じることが既に知られており、これは湖岸の様々な環境要因が影響していると考えられる。
 そこで、本研究では北湖湖岸33地点において距離あたりの羽化殻数を求め、環境要因(波高・湖底面積・植生・粒度組成)との関係について一般化線形モデルを用いて解析した。
 北湖ではメガネサナエ属2種が約80%の調査地で優占種であった。しかし、一部でウチワヤンマが優占する琵琶湖南湖と同じような群集組成(奥田, 未発表)の調査地も存在した。
 以下、トンボ類の分布と環境要因の関係について述べる。波高は、ウチワヤンマに負の影響を与えていた。これは、ウチワヤンマがメガネサナエ属2種より浅い水深に生息(六山・広瀬, 1966)しており、波による湖底の撹拌の影響を受けやすいからと考えられる。植生は、クロマツ群落がメガネサナエに正の影響を与えていたが、ヤナギ群落はメガネサナエ属2種に負の影響を与えていた。また、両群落はウチワヤンマへの影響が検出されなかった。これは、日中に羽化するメガネサナエ属が日当たりのよいクロマツ群落のような湖岸を選好するためと考えられる。粒度組成は、砂がメガネサナエに負の影響、オオサカサナエに正の影響を与えていた。これは体サイズの差に起因するものと考えられる。泥はウチワヤンマに正の影響を与えていた。これは、ウチワヤンマが基質に浅く潜行する(Corbet, 2007)ため、泥質湖底で生じやすい酸欠の影響を受けにくいからと考えられる。


日本生態学会