| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-060  (Poster presentation)

土壌微生物間相互作用の解明への試み
Challenge for revealing the interaction of soil microbiome.

*景山拓矢, 東樹宏和(京都大学)
*Takuya KAGEYAMA, Hirokazu TOJU(Kyoto Univ.)

細菌、真菌、線虫は土壌微生物叢、メソファウナの中で大きなアバンダンスを占め、食物網や生態系機能の重要な部分を担っている。近年のNGSやHTSといった分子技術の発展によりこれらの生物叢の多様性や生態学的機能が明らかにされてきた。これらの分子技術を利用する際には環境サンプルからDNAを取り出す必要がある。土壌からのDNA抽出は商業キットを用いて行われることが多いが、ほとんどの商業キットに用いられる土壌量は0.25gから0.5gである。土壌環境は不均一性が高く、それに伴って生物叢の分布も不均一になるため、サンプリングデザイン特にサンプルサイズが問題になる。これまでサンプルサイズに関する議論はなされてきたが、細菌、真菌、線虫の三つのグループに関する包括的な議論は十分ではない。本研究では圃場と森林において0.5gから20gまでの土壌からジルコニアビーズを用いたビーズ破砕法とExtrap Soil DNA Kit Plus Ver.2 (株式会社バイオダイナミクス研究所)によるDNA抽出を行なった。さらにIllumina MiSeq (Illumina株式会社)によるアンプリコンシーケンスを行い、得られた細菌、真菌、線虫のα多様性と群集構造を比較することで適切なサンプルサイズを検討した。その結果、細菌と真菌では検出されたα多様性はすべての土壌量で有意差が見られなかったが、線虫ではα多様性が土壌量とともに増加した。また、細菌と真菌では同一土壌量間での群集構造の非類似度はすべての土壌量間で有意差が見られなかったが、線虫では土壌量が増加するにつれて非類似度が減少した。さらに、PERMANOVA の結果から、圃場細菌、圃場真菌、森林真菌、圃場線虫のレプリケート間の群集構造が有意に異なった。以上のことから、細菌群集、真菌群集、線虫群集に注目する場合は10gの土壌を用いてレプリケートを増やすアプローチが適切だと結論づけた。


日本生態学会