| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-066  (Poster presentation)

モモジロコウモリの餌場利用とコミュニケーション音声の関係
Relationship between foraging patch use and communication calls in Myotis macrodactylus

*松岡佳奈(同志社大学), 藤井紀帆(同志社大学), 藤岡慧明(同志社大学), 福井大(東京大学), 飛龍志津子(同志社大学)
*Kana MATSUOKA(Doshisha Univ.), Kiho FUJII(Doshisha Univ.), Emyo FUJIOKA(Doshisha Univ.), Dai FUKUI(Tokyo Univ.), Shizuko HIRYU(Doshisha Univ.)

動物にとって採餌行動は必要不可欠であり,効率よく行うための最適採餌戦略を持っていると考えられる.野生動物の採餌戦略を明らかにするには,餌場の情報や捕食タイミングを詳細に調べる必要があるが困難な場合が多い.また餌場利用の最適性を評価する最適餌場利用戦略に関する研究では餌場に一個体のみが存在する場合を仮定したものが多い.そこで本研究ではモデル動物として,エコーロケーション音声から餌場の入出時間,採餌のタイミング回数を容易に推定できるコウモリに着目し,餌場に複数個体存在する際の餌場利用戦略の解明を目指した.観測は,モモジロコウモリが餌場とする池を取り囲むように16chのマイクロホンアレイを設置して行った.その結果,モモジロコウモリは後から採餌に来た個体を追い出すことなく,先に餌場にいた個体自らが出て行くケースが複数見られた.先に餌場を出て行くコウモリの割合を採餌数別に調べたところ,採餌数が0回の時10%,1~10回の時31%,10~20回の時47%,21回以上の時65%であった.このことから採餌数が多いほど,別個体が来た際に自ら餌場を出て行く可能性が示唆された.水面からの反射がある環境下で採餌を行う為,複数での採餌は音響的混信によるコストが高くなると考えられ,ある程度採餌を行った個体は混信を回避し餌場を出て行くと考えられる.次に餌場での個体間の相互作用に関係するsocial callに着目した.本研究では,エコーロケーションと明らかに異なる構造を持つ,social callと考えられる二種類の音声を確認した.一つはバズ音(N=7),もう一つは持続時間が長いという特徴を持つ音声(N=5)である.前者は他個体から追尾されている場面で確認されたことから忌避行動に際した音声である可能性が考えられる.一方後者は,餌場を退出する際に多く確認されたことから餌場に関する情報伝達を行っている可能性が高いと考えた.今後はsocial callの有無とコウモリの飛行軌跡の関係等についても分析する予定である.


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