| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-070 (Poster presentation)
光害による昆虫類への悪影響が顕在化している現在,多くの野外照明が発光ダイオード(LED)に置き換えられつつある.正の走光性をもつ夜行性の昆虫にとって紫外線を発しないLEDよりも,紫外線を発する従来の照明の方が一般に誘引力が高いとされる.しかし,一般的に使用される白色LEDは様々な波長と短波長のピークをもつ光を発するため,必ずしもLEDの誘引力が低い訳ではない.また,特に国内の森林環境における波長ごとの誘引力や影響を受けやすい分類群などについての知見は不足している.よって本研究では,白色LEDから放出される波長域内のピーク波長をもつ光色(波長)の異なる4種のLED光源に対する昆虫の誘引力を比較した. 2021年8月から10月にかけて,滋賀県大津市東部にある龍谷大学瀬田キャンパス隣接地の森林内2地点にてライトトラップによる昆虫類の採集を行った.光源とピーク波長はそれぞれ,青色光(450nm),緑色光(540nm),黄色光(580nm),赤色光(630nm)を使用した. ライトトラップにて採集された昆虫は,青色光が150種1388個体,緑色光が124種843個体,黄色光が88種626個体,赤色光が62種267個体であった.なかでも多種多個体が採集されたハエ目ユスリカ科,カメムシ目ヨコバイ科昆虫は両群共に青色光で最も多く採集され,次いで緑色光,黄色光,赤色光の順であった.また,それ以外の多くの分類群も同じ傾向を示し,青色光を多く含む白色LEDはその誘引力の高さから,昆虫類への悪影響を及ぼす可能性がある.その一方で,緑色光,黄色光で最も多く採集された種が少なからず存在するとともに,目・科レベルの傾向と種の傾向が異なることもあることから, 光害による影響を正確に評価するには,種レベルの分析及び,地域・季節間の違いによる出現種の相違を考慮する重要性が示唆された.