| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-072  (Poster presentation)

幼虫期の環境が種間競争を形造る:時系列行動解析によるアプローチ 【B】
Growth Environment in Larvae Shapes Interspecific Competition: An Approach based on Time-series Behavioral Analysis 【B】

*向峯遼(筑波大学)
*Wataru MUKAIMINE(University of Tsukuba)

近縁種間での誤った求愛行動は繁殖干渉を引き起こし、一方あるいは両方の種の適応度を減少させる。ヨツモンマメゾウムシ(以下:ヨツモン)とアズキゾウムシ(以下:アズキ)のマメゾウムシ2種間では、異種の交尾器の挿入がメスの適応度を減少させる原因であると知られている。しかし他種が存在する状況において交尾に至るまでの行動を調査した研究は少ない。加えてヨツモンにおいては、幼虫期に豆内の幼虫個体数増加やそれに伴って生じる豆内の温度上昇が成虫期の活動性を上げることが知られている。そこで本研究では、幼虫期の温度上昇を伴って生じるヨツモン成虫の活動性に対する可塑性が、異種であるアズキの活動性からどのような影響を持つか調べるため、異種同居時の行動の撮影とトラッキングソフトを用いた解析を試みた。
温度上昇区とコントロール区で生育したヨツモンの雌雄にアズキの雌雄をあてがい動画を撮影した。これらの動画に対して、トラッキングソフトを適用することで座標の時系列データを取得し、そこからフレームごとの移動量の時系列データを計算した。撮影した動画から得られた20分の時系列データに対して時系列因果推定手法の一つであるEDMを適用した。
その結果、コントロール区のヨツモンはアズキの移動量から因果を強く受ける一方で、温度上昇区のヨツモンはアズキの移動量から因果を受けにくいことが明らかになった。またアズキからコントロール区のヨツモンへの因果はヨツモン種内で生じる因果と同程度に生じていた。これらのことから温度上昇を経験したヨツモンは経験していないヨツモンに比べて活動性が高く、単純な移動量が多いためアズキの行動から因果効果を受けにくかったのではないかと考えられる。


日本生態学会