| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-077 (Poster presentation)
日本に生息するヤマトシリアゲPanorpa japonicaは、婚姻贈呈用の餌を巡って雄間闘争を行う。愛知個体群を用いたThornhill(1992)の研究では、雄間闘争に敗れた雄は争った餌の付近で待機(サテライト)し、餌にやって来た雌に対して、餌を用いない強制交尾を試みることが報告している。一方、岡山個体群を用いたIshihara and Miyatake(2021)では、敗れた強制交尾を行わず、勝利雄がいる餌場へしばしば再侵入(スニーキング)を試みるなど、異なる地域間で代替交尾戦術に差異が生じている可能性が示唆された。本発表では、この仮説の実証を試みたので報告する。2個体群間の行動を野外観察で比べた結果、スニーキングは愛知県個体群でも確認されたが、岡山個体群よりも有意に少なかった。さらに愛知県個体群は岡山県個体群よりも敗北雄の待機持続時間が短く、早く餌場から立ち去ることが示された。これらの知見より、岡山と愛知の両個体群間で代替交尾戦術が異なることが示唆された。2個体群間で、餌場に来訪する雌の総数に有意差が見られたことから、雄の代替交尾戦術に雌の来訪数が影響している可能性が示された。今後、これらの行動が遺伝的であるか、また代替交尾戦術の進化に影響を与えた要因などについて、さらなる調査が必要である。