| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-080  (Poster presentation)

ヤリタナゴとアブラボテにおける産卵基質をめぐるオス間競争の種間比較
Comparison of competitive behaviors for spawning substrates between two species of bitterlings, Tanakia lanceolata and T.limbata

*佐藤萌柚(岡山理科大学), 前田敬梧(岡山理科大学), 谷口倫太郎(岡山大学), 武山智博(岡山理科大学)
*Moyu SATO(Okayama University of Science), Keigo MAEDA(Okayama University of Science), Rintaro TANIGUTHI(Okayama University), Tomohiro TAKEYAMA(Okayama University of Science)

種間でのニッチの重複の程度は種間競争の強さに対応し、種間競争は多様な生物の共存機構や群集構造の決定に重要な役割を果たす。一般的に、種内では種間に比べてニッチの重複が大きいため、資源をめぐる競争は種間より種内の方が激しく、これが複数種の共存機構としてはたらく。タナゴ亜科魚類は生きた二枚貝を産卵基質として利用し、二枚貝の周囲にオスが縄張りを形成する。タナゴ亜科のオスは、同種のオスと二枚貝をめぐって競争するが、異種のオスに対して、どのような行動をとるのかは解明されていない。そこで本研究では、生息場所が重複する2種のアブラボテ属のタナゴ、ヤリタナゴ Tanakia lanceolata とアブラボテ T. limbata を対象として、縄張りに関する行動とオス間競争の同種および異種での違いの解明を目的とし、水槽実験による行動観察を行った。両種の縄張りに関する行動を11項目に区分した。水槽に投入する順番によって2個体を縄張り主と侵入者として区別し、同種間2群(ヤリタナゴ×ヤリタナゴ、アブラボテ×アブラボテ)および異種間2群(ヤリタナゴ×アブラボテ、アブラボテ×ヤリタナゴ)の計4群について各行動を記録した。その結果、異種間2群より同種間2群の方が闘争に関する行動の頻度が高く、異種間では闘争行動が誘発されにくかった。また、1個体が他個体を排除する「追い立て行動」について、同種間2群では縄張り主と侵入者の間に差は認められなかったが、異種間2群ではいずれもアブラボテが有意に頻度が高く、縄張り主、侵入者に関係なくヤリタナゴが排除される傾向にあった。これらの結果から、アブラボテ属2種の行動は、主として同種個体の排除にはたらくが、異種では完全な排除に結びつかないことが示唆された。また、異種間競争ではヤリタナゴが排除される傾向が高く、2種が同所的に生息する地域においてはアブラボテが二枚貝を占有する可能性がある。


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