| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-082  (Poster presentation)

単独性小型哺乳類が形成する集団のメンバーは不特定か?ータイリクモモンガの例ー
Are the members of group formed temporarily by solitary small mammals fixed? A case study on the Siberian flying squirrels

*菊池隼人, 押田龍夫(帯広畜産大学)
*Hayato KIKUCHI, Tatsuo OSHIDA(Obihiro University)

単独で生活する小型哺乳類が集団を形成し,これが一定期間保たれるとき,その集団は,1)不特定の個体が出入りする状態で維持される,或いは2)特定の個体同士によって維持される,という仮説を提唱し,その検証を行った.本研究目的のために,冬季に集団で営巣を行う単独性リス科齧歯類であるタイリクモモンガPteromys volansを研究対象とした.北海道帯広市の市街地に位置する孤立した防風林において,2019年5月から2020年10月に個体を捕獲し,PITタグを埋設して標識した.2020年9月から2021年4月に,PITタグ情報(個体識別番号)のリーダーを2ヶ所の樹洞巣(間隔は約50 m)に取り付けた状態で,ビデオカメラを用いて巣を観察した.これによって,巣を利用した個体や,その他の行動(交尾期に特有な行動である,オスによる巣穴覗き,巣の入り口への排尿等)を記録した.日ごとに明らかになった営巣メンバーから,個体間の同居の度合いを,単純比率指数(SRI)を用いて月ごとに評価した.
観察の結果,2ヶ所の巣では調査期間を通じて12個体が巣を訪れ,7個体が営巣した.11月1日~3月24日に集団での営巣が観察され,一日に営巣する個体数は,2から6で変動した.営巣メンバーの中には,営巣頻度およびSRIが相対的に高い4個体が認められ,これら4個体による集団は両方の巣で観察された.3月下旬になると,これらの4個体による集団営巣は観察されなくなり,別のオス2個体が営巣に加わるようになった.同時期に,オス個体による,巣穴を頻繁に覗く行動や,巣穴の入り口への排尿行動が観察されたことから,交尾期に伴い,配偶相手を求めたオス個体の移動が起きたと考えられた.以上の結果から,冬季のタイリクモモンガの営巣集団では,特定のメンバーによる集団が緩やかに維持されるが,交尾期に伴いメンバーは変化すると考えられた.


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