| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-085 (Poster presentation)
鳥類の翼には、飛翔やディスプレイなどの機能があり、その形状は各種の生態と関連していると考えられる。これまでの実験で、翼端の関節の屈曲度合いと体重との、さらに、羽ばたきのパターンと手首関節の可動範囲との関連が示され、翼端形状については各種生態との関連が示されたことから、鳥類は翼端形状と各関節の可動域を複合的に変化させることによって、生息環境や体重に応じた多様な飛翔スタイルを獲得していると考えられる。しかし、飛翔中の翼の変形のもつ機能や、生息環境内での行動様式との関連については、検討が不十分である。そこで本研究では、系統関係を考慮した上で、翼形と関節の可動域の変異、さらには関節の動きに伴う翼形の変化が、体サイズ、飛翔スタイルなどの生態的要因と関連するかを解析する。30種の鳥類冷凍資料を用いて、翼の各関節可動域の計測と、関節の運動に伴う風切羽先端の変形の計測を行い、これらと採餌環境、採餌行動のタイプ、渡り性、食性、体サイズ、翼のアスペクト比との関連を、鳥類の系統関係を考慮して解析した。その結果、関節可動域については、体サイズのみが中手骨端関節の可動域を説明した。これを受けて、体重の効果を除いたうえで、翼の変形について解析を行うと、食性と翼端の変形との関連が示された。これとは別に翼形について、274種の翼標本画像を用いて、ランドマーク法およびセミランドマーク法による形態解析を行い、各種鳥類の生態的要因各項目との関係を解析した。その結果、ここでも翼端形状が食性と関連を示すことが示され、翼端形状とその変化の違いが餌に合わせた採餌行動の違いに対応していることが示唆された。また、系統を考慮した上で、翼端および雨覆の形状と、渡り性、すなわち飛翔能力の必要性との関連が見られた。これらの結果は、翼端や雨覆の形状が、飛翔時に操縦性や速度の調整において重要な機能をもつことを示唆している。