| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-086  (Poster presentation)

ツチガエルのアリ食に見られる特殊な捕食行動
Prey-catching behavior observed in ant-eating by the Japanese wrinkled frog, Glandirana rugosa

*田中早陽子, 森哲(京都大学)
*Sayoko TANAKA, Akira MORI(Kyoto Univ.)

カエルは一般的に広食者であり、視覚情報をもとに小さく動くものに反応し、向き直ってアタックするという捕食行動をとる。しかし一部の種では、アリ等を多く捕食することが知られており、専食者に近い種も存在している。日本国内の種でも、ツチガエルがアリを多く捕食していることが先行研究の胃内容物調査で報告されている。そこでツチガエルがアリへの選好性を持つかどうかを調べるため、室内行動実験によって餌選択性を検証した。餌動物としてアリ(クロヤマアリ)と、比較対象としてのコオロギ(エンマコオロギ・フタホシコオロギ)を与え、反応や捕食の様子を観察した。結果としてアリへの選択性は確認できなかったが、特徴的な捕食行動が見られたため詳細を調べることとした。ツチガエルがアリとコオロギそれぞれを捕食する場合において、アタック時の吻端の移動距離で示す「アタック距離」を比較したところ、アリの場合はより近距離に近づいた時に捕獲することが示唆された。また各試行における捕獲行動を、向き直りの有無やアタックの様子によって分類した。その結果、アリを捕食する場合においては、従来知られているような、後肢の伸展および体の移動を伴うアタックによる餌捕獲のほかに、体全体の動きを伴わない極度の「待ち伏せ」ともいえる捕獲の行動が見られた。この場合、アリが動き回っていても体を伸ばしてアタックせず、ごく近距離に近づいてきて初めて舌でのアタックを行った。これらのことから、ツチガエルはアリと他の餌動物とを識別し、捕食行動を変化させていることが示唆される。中でも、その場からほぼ動かずに捕食するという行動は、ツチガエルのアリ捕食に特有のものである可能性があり、今後試行を重ね確かめるとともに、アリを多く捕食するという食性の傾向との関連も検証したい。


日本生態学会