| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-091  (Poster presentation)

ニホンマムシは本当に夜行性なのか:季節・利用環境に応じて変化する出現傾向
Sighting rate of the Mamushi, Gloydius blomhoffii, changes according to the seasons and microhabitats.

*福山亮部, 森哲(京都大学)
*Ryobu FUKUYAMA, Akira MORI(Kyoto Univ.)

 多くの動物は決まった時間帯のみに活動すると考えられ、ほとんどの種が昼行性、夜行性、あるいは薄明薄暮性といった活動傾向を示すとされてきた。一方、活動がある時間帯に限られず、昼も夜も活動を行う種も知られており、このような種は周日行性と呼ばれている。周日行性の種は様々な分類群で知られており、多くの動物の活動時間は従来の考えのような厳格な制限を受けていないのではないかという議論もある。
 そこで本研究ではニホンマムシに着目し、活動性を調査した。本種は一般に夜行性とされてきたが、日光浴のような日中の活動も行うことが先行研究で報告されている。2020年7月から2021年12月にかけて京都府北部の山林で行った調査では、ニホンマムシをラジオテレメトリー法で追跡し、野外での行動を昼夜で比較した。各定位時には、各個体が出現中か、否かを目視により判断し、活動性の指標として用いた。
 その結果、ニホンマムシは日中にほとんど隠れておらず、多くの個体が出現していることがわかった。出現傾向は季節に応じて異なり、5月や10〜12月の冬眠前後は夜間の出現率が低く、ほぼ日中にのみ出現していた一方、6〜9月には昼と夜にほぼ同程度の出現率を示した。また、同じ個体が河川敷と森林を行き来していたが、河川敷では森林に比べ、昼夜ともに隠れていることが多く、出現傾向は環境によっても異なっていた。
 以上の季節や環境に応じた出現傾向の変化は、ニホンマムシの体温調節や外敵回避と関係していると考えられた。したがって、ニホンマムシの出現傾向は時間帯による制約を受けているのではなく、それ以外の要因によって変動すると示唆された。これらのことから、ニホンマムシは従来考えられてきた夜行性ではなく、季節や環境に応じて活動傾向を変化させる周日行性であることが示唆された。


日本生態学会