| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-093 (Poster presentation)
社会性動物は有限資源をめぐって隣接する同種集団と競争する場合がある。社会性動物において、同種の群れ外個体に対する敵対性は三つのレベルで変化することが知られる。まず、個体の性別・年齢・体サイズなど個体状態の違いによって敵対性が異なる場合がある。また、相手が自分と同性か異性か・大きいか小さいかなど、相手の属性によっても敵対性を変化させる。さらに、個体数の多い集団に個体が所属しているか・所属集団に仔が存在するか・繁殖個体が存在するかなど、所属集団の社会状態によって敵対性が異なる事例も報告されている。真社会性哺乳類のハダカデバネズミは、分散性の低い閉鎖的なコロニーを形成し、コロニー外個体に対し排他的な性質を持つことで知られる。ハダカデバネズミでは、体サイズの大きい個体ほど敵対的な性質を示すなど、敵対性に対する個体状態の効果が調べられてきた一方で、相手の属性や所属コロニーの社会状態が与える影響は全くわかっていない。本研究では、ハダカデバネズミの飼育個体を対象に、コロニー外個体への敵対性が個体状態・相手属性・コロニー状態によって異なるかどうかを調べた。予備実験で全く敵対性を示さなかった個体に対し、別のコロニーに所属する個体が攻撃または威嚇するかどうかを記録した。結果として、繁殖個体が存在しないコロニーに属する個体は敵対性をほとんど示さなかった。繁殖個体が存在するコロニーの個体に限れば、年齢の高い個体、相手より小さい個体、個体数の少ないコロニーに所属する個体が、敵対的な姿勢を示した。また、同じ年齢でも体の大きい個体ほど敵対的な傾向が見られた。一方で、性別や仔の有無は有意な効果を示さなかった。繁殖個体不在のコロニーに所属する個体では、性ホルモンの変化が生じることでコロニー外個体への応答も変化した可能性が示唆される。また、敵対的な行動の中でも程度の違いが存在するため、更なる解析が期待される。