| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-095 (Poster presentation)
アリ科は高度な社会性を持つことで生態的に繁栄している。一方、遺伝的に近縁な個体が集団で密集して営巣するため、コロニー内へ病原体が侵入した後に拡大するリスクが非常に高い。そのため、アリ科の成虫は個体同士の相互グルーミングや、抗菌物質の分泌といった機能を進化させることで病原体に抵抗していると考えられている。アリ科の幼虫や蛹等の未成熟個体は自由に動くことができず、ワーカーからグルーミング等の衛生行動を受けることで保護されている。また、アリ科のほとんどの種では、未成熟個体が繭に包まれており、これも病原体への感染防御としての機能を果たしていると考えられる。
本研究において、アリ科のごく一部の種で、幼虫が繭を紡ぎ、その内側にフンをした後、ワーカーがそのフンのついた繭の後端を切り取り、除去する行動を発見した。この行動の意義を明らかにするため、繭の後端が切り取られないように操作したところ繭後端のフン部分からカビが発生し、繭後端が切り取られた未成熟個体より死亡率が高くなった。一方、繭後端を切り取らない種では、ワーカーが繭後端へのグルーミング頻度を増加させることでカビを抑えていることが示唆された。そのため、繭後端を切り取る種では、フン部分を切り取ることでワーカーの後端へのグルーミング頻度が低下すると予想していたが、そうではなかった。本研究では繭の形態とワーカーのグルーミングの労力について考察したい。