| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-106  (Poster presentation)

ウロコアリStrumigenys lewisiの揮発性物質を用いたトビムシ捕食戦略
Springtail predation strategy using volatiles in Strumigenys lewisi

*小泉裕人, 寺崎雅人, 松田真拓, 宮崎智史(玉川大学)
*Yuto KOIZUMI, Masato TERASAKI, Mahiro MATSUDA, Satoshi MIYAZAKI(Tamagawa Univ.)

ウロコアリ属のアリの多くは,トビムシを専門的に捕食する.そして,ウロコアリ属の数種はアロモンによってトビムシを誘引することが報告され,そのアロモンはウロコアリ属の新奇形質である海綿状付属物から分泌されるのではないかと考えられている.しかし,ウロコアリのアロモンの成分やその生産・分泌部位については,詳しい研究がされていない.そこで本研究では,日本におけるウロコアリ属の普通種であるウロコアリStrumigenys lewisiがアロモンを用いた採餌戦略を行っているか,海綿状付属物がアロモンの分泌部位であるかを明らかにすることを目的とした.
ウロコアリのワーカーを両面テープでシャーレの中心に固定し,そのシャーレ内に放ったトビムシ10個体の位置を経時的に記録したところ,遠縁な他種のアリや両面テープのみを設置した対照区に比べ,シャーレの中心付近に滞在するトビムシの数が有意に多かった.次に,海綿状付属物をエナメル塗料で被覆したウロコアリをシャーレの中心に固定し,トビムシの移動を記録したところ,海綿状付属物以外の部位を被覆した対照区に比べ,ウロコアリに接近するトビムシの数が有意に低下した.また,上記の実験の過程で,トビムシの活性が落ち,トビムシが麻痺する様子が観察された.そこで,ウロコアリを両面テープでY字管の一端に固定し,Y字管内に放ったトビムシ1個体が麻痺するかを調べたところ,明確にトビムシの麻痺がみられた.このとき,遠縁な他種のアリや両面テープのみを設置した対照区でトビムシは麻痺しなかった.
本研究から,ウロコアリはトビムシを誘引することが確かめられ,その誘引には海綿状付属物から分泌されるアロモンが関与すると考えられた.さらに,ウロコアリはトビムシを誘引するアロモンだけでなく,麻痺させるアロモンを利用することも示唆された.


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