| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-107 (Poster presentation)
相利共生とは異なる生物種が長期的に関係を持ち、お互いに利益を得る種間関係である。マメ科植物と根粒菌などの相利共生ではその共生のあり方が周囲の栄養状態で決まることが知られている。近年、テッポウエビとハゼの相利共生において、私たちの研究から、珊瑚礁などの栄養の乏しい環境のエビとハゼは互いに給餌し合い、餌で強く繋がる義務的共生の関係であることが証明された。エビとハゼの相利共生関係は種によって多様であることが知られ、強い繋がりをもつ義務的共生種もいれば、希薄な繋がりしかない日和見的共生種もいる。しかし、なぜこのように多様な共生関係が存在するのかは分かっていない。これまでの研究を踏まえ、私たちは互いに給餌し合う強固な共生関係は栄養の乏しい環境で発達したという仮説を立てた。そこで本研究では、栄養が豊富な環境と乏しい環境でエビとハゼの行動を調べ、環境と相利共生のあり方について検討した。栄養の乏しい環境に住むオニハゼとニシキテッポウエビのペアと、栄養の豊富な環境に住むスジハゼとテッポウエビのペアにおいて、エビがハゼに給餌する行動である「溝堀り」や溝堀りをした面積、エビが巣の外で活動していた時間、ハゼが摂餌した頻度などを記録した。以前から調査されている2種のエビとハゼのペアの結果を加え、4ペア種間で行動を比較した結果、栄養の乏しい環境に生息するベントス食のオニハゼ、ダテハゼペアでは、溝堀りによってエビがハゼへ給餌する行動などが見られ、餌で強く繋がる義務的共生だとわかった。また、同じ環境に生息していてもプランクトン食のハゼのネジリンボウペアは共生のあり方が異なっていた。一方、栄養の豊富な環境に生息するスジハゼペアではハゼは自身で摂餌し、お互いが別々に活動していた。以上より、ハゼの摂餌生態と環境の栄養状態によって、エビとハゼの多様な共生関係のあり方を説明できることが明らかになった。