| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-123  (Poster presentation)

水田ビオトープにおけるシュレーゲルアオガエルの産卵場所特性
Spawning habitats characteristics of Schlegel's green tree frog Zhangixalus schlegelii in fallow field biotopes

*藤田大空(兵庫県立大学大学院), 佐川志朗(兵庫県立大学大学院, コウノトリの郷公園)
*Ozora FUJITA(University of Hyogo,RRM), Shiro SAGAWA(University of Hyogo,RRM, Hyogo Park of the OWS)

兵庫県豊岡市ではコウノトリ野生復帰事業の一環として,休耕田を活用した水田ビオトープを造成する取り組みが50カ所以上で行われている.これらの生態的機能に関する評価は様々行われてきたが,陸域に産卵するシュレーゲルアオガエルは着目されてこなかった.本研究では水田ビオトープにおけるシュレーゲルアオガエルの産卵場所特性を明らかにし,得られた知見から人工的な産卵場所の考案および導入を行った.
調査地は円山川支流鎌谷川沿いの4エリア計13個のビオトープである.各調査地では,目視による卵塊確認を2020年4月から5月に計9回実施した.各ビオトープの環境特性(後述)を航空写真から定量化するとともに,産卵箇所および非産卵箇所における水辺の物理環境(後述)を計測した.目的変数に卵塊数,説明変数(環境特性)に谷幅,面積,標高,および草刈りの有無とした一般化線形モデルを構築した結果,草刈りがなされており,谷幅が狭く,標高が高いビオトープほど卵塊数が多い結果を得た.また,目的変数に卵塊の在・不在,説明変数(物理環境)に水深,地形横断多様度,比高差,カバー長,水中カバー長,陸上カバー長,水面上カバー長,横断勾配,水中勾配,および陸上勾配の10環境要因を選定しロジスティックモデルを構築した結果,水深が深い水辺に卵塊が存在し,その位置は水際から20cm陸域内に卓越する傾向が確認された.
以上を踏まえ,調査地から産卵場所の条件を満たすビオトープを選定し,人工基質を2021年の3月に導入した.まず畔には波板を設置し,波板の水域側に3タイプ(土盛り,石積み,ブロック)の基質を4区画ずつランダムに設置した.同年の4月から6月にかけて計8回の卵塊確認調査を実施した結果,基質では卵塊が確認されなかった.発表では産卵に至らなかった経緯も含めて一連の研究内容を御紹介したい.


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