| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-124 (Poster presentation)
環境DNA分析は新しい技術として、魚類の繁殖期を推定するのに有望である。これは、魚類の繁殖行動に伴って、繁殖期に環境DNA濃度が上昇するためである。これまで、この現象を利用した魚類の繁殖期モニタリングでは種特異的なプライマーで単一の魚類の繁殖期推定が行われてきたが、多種の繁殖期を同時にモニタリングする方法はこれまで報告されていない。そこで、内部標準DNAを使用した定量的メタバーコーディングアプローチにより、複数の種の環境DNA濃度を同時に推定し、魚類の繁殖期の多種同時モニタリングを試みた。2019年と2020年の3月から8月まで、福島県の三春ダムの蛇沢川前貯水池内の3つのサイトにおける週1回のサンプリングを行った。それらの水サンプルから、定量的環境DNAメタバーコーディングを用いて、複数の魚類の環境DNA濃度を同時に調べた。一般化混合加法モデル(GAMM)を利用して環境DNA濃度を評価した結果、異なる魚類の環境DNA濃度は異なる水温でピークに達することが見いだされた。ただし、一部の魚類の環境DNA濃度は水温の上昇とともに増加したが、減少傾向を示さなかった。次にGAMMを用いて、魚類の繁殖活動と環境DNA濃度及び水温の関係をモデル化し、このダム湖における13種の魚類の繁殖期を環境DNAデータをもとに推定した。推定された繁殖活動は知られている魚類の生態と一致する場合と一致しない場合があったが、魚類の繁殖期を判断するための重要な情報となりうると考えられる。