| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-125 (Poster presentation)
食性は生物の生態や生活史と密接に関わるため、さまざまな研究が行われてきた。河口域生態系は様々な生物が関わり合う複合生態系として知られ、人間の生活とも密接に関わる生態系の一つである。河川生態系で優占するハゼ科魚類の食性を理解する事は、河川生態系を知る上で重要である。本研究では、日本海の離島である佐渡島の河川に広く分布する両側回遊性のハゼ科ウキゴリ属魚類を対象として、詳細な食性を明らかにすることを目的とした。
調査は、佐渡島北西に位置する外海府海岸にある石名川と達者川で、2021年の春(4〜6月)、夏(7〜9月)、秋(10〜12月)の季節にそれぞれ1回行った。各回、ウキゴリ属魚類約10個体と、流速の異なる2地点において餌候補として底生生物を定量採集した。採集したウキゴリ属(スミウキゴリ、シマウキゴリ)は、種同定、体サイズ測定の後、解剖し、胃内容物の餌生物について科レベルまで同定を行った。底生生物も科レベルまで同定した。
胃内容物と底生生物の双方で最も多く確認された分類群はユスリカ科であり、いずれの季節でも確認された。カゲロウ目やトビケラ目は多様な分類群が確認された。NMDSの結果、底生生物群集は河川および季節ごとでまとまりがみられ、それぞれにおいて群集構造が異なることがわかった。胃内容物についても、個体間同士の餌組成の傾向は近いものの、底生生物と同様の傾向がみられた。このことから、ウキゴリ属の食性の季節変化は底生生物群集の季節変化に伴ったものであると考えられる。また、春には、他の季節と比べて底生生物の個体数や分類群数が多いにもかかわらず、ウキゴリ属個体間の胃内容物組成の傾向は類似していた。これらより、本属は日和見的な食性を持ちながらも、餌生物が豊富な状況下では特定の餌生物を選択する可能性が考えられた。以上より、ウキゴリ属魚類の食性は周囲の生態系に影響をうけ可塑性をもつと推測された。