| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-126  (Poster presentation)

オスでは色彩の多様性効果は見られない:フユシャク類の種間比較
Intraspecific diversity of wing color pattern and distribution range in winter geometrid moths

*増田有沙, 鈴木紀之(高知大学)
*Arisa MASUDA, Noriyuki SUZUKI(Kochi Univ.)

集団内の色彩変異が分布の拡大や絶滅リスクの軽減といった種全体の特性にプラスの影響を及ぼすことがさまざまな分類群から報告されている。一部のグループでは、色彩多型の生じる性によって分布範囲に与える影響が異なることが明らかになっている。しかし、集団内の多様性が高次の階層に波及する効果について性の違いが果す役割についてはほとんど明らかではない。そこで本研究では日本産フユシャク類を対象に、オスの色彩変異と種レベルの分布面積の関係を調べた。フユシャク類はメスの翅が著しく縮小しているため、オスの翅の色彩変異のみを考慮して種内の多様性と種全体の特性について比較することができる。まず、図鑑の標本画像から色情報を抽出し、個体間の色の非類似度を種ごとに総当たりで算出し、その平均を各種の色の多様度とした。次に、色の多様度と食草の科数が分布面積に与える影響を解析した。その結果、色の多様度と分布面積には有意な関係が見られなかったが、食草幅の広い種ほど分布面積は広かった。以上の結果から、フユシャク類ではオスの色彩の多様性は種の特性に影響を与えないことが示唆された。オスに正の多様性効果が生じてもメスの繁殖および次世代の生産性には直接寄与しないため、集団・種レベルの動態には影響を与えていない可能性が考えられるだろう。


日本生態学会