| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-129 (Poster presentation)
ヨタカは環境省レッドリストで準絶滅危惧種に指定されており、国内で繁殖する渡り鳥で完全な夜行性である。本種は地面に直に産卵するという、国内で繁殖する他の鳥類にはみられない営巣習性を持つ。森林の林床や砂礫地での営巣が報告されているが、本研究ではこれまで報告されていなかった火入れにより維持されている二次草原での本種の営巣を確認した。二次草原での本種の保全に重要な繁殖生態を明らかにするため、繁殖期のなわばり分布や営巣環境特性を、植生や地質的要因に着目して明らかにした。
第一に、二次草原での繁殖密度を把握するため、繁殖が確認された調査地において半径250mの定点を14地点設定し、オスのさえずり位置からなわばり数を推定した。その結果、1km2あたり3.06~3.57個のなわばりが確認された。またヨタカのなわばりが確認された定点のほとんどは、溶岩台地に分類される比較的新しい地質年代の区域が含まれており、堆積地に分類される地質に位置する定点では1定点のみでしかなわばりが確認されなかった。定点内の各種土地利用の割合をGISにより算出し、溶岩台地と堆積地の定点で比較した結果、有意な違いは認められなかった。
第二に、ヨタカの営巣環境特性を明らかにするために巣を探索し、巣を中心とした10m×10mの区画を設定して植生構造調査を行った。同様の調査を溶岩台地の非営巣地、堆積地の非営巣地においても実施し比較した。その結果本種の巣は溶岩台地でのみ確認され、溶岩台地の非営巣地や堆積地の非営巣地に対しヨタカの営巣地では石礫粒径が大きい傾向があった。また堆積地の非営巣地より営巣地は裸地被覆率が高く、地上高1~1.5mの背丈がやや高い植生の被覆率は低い傾向があった。溶岩台地は尾根状になっており地質年代が堆積地より浅いため、植生高は低く裸地が優占し、水はけがよく、地面への本種の営巣に適している可能性がある。