| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-135 (Poster presentation)
温帯や亜寒帯での研究から、鳥類の繁殖成功に対して、気象条件は地域や種ごとに異なる影響を及ぼすことが知られている。繁殖成功を低下させる原因としては、悪天候によってヒナへの給餌量が減少し栄養失調になる、高温によって熱中症になる、雨に濡れることで低体温
症になるなどが挙げられる。低緯度地域では気候変動に応じて生息地の標高分布を変えた例が知られており、鳥類の繁殖は気象の制約下にあることが示唆されている。そこで、今回の研究では沖縄県南大東島に生息するリュウキュウコノハズクOtus elegansへの気象条件の影響について検討した。南大東島は亜熱帯海洋性気候に属する海洋島である。気温が高いため、高温による悪影響が見られることが期待された。また、降水量が多いと、死亡率が上がることが予想された。2016年から2021年の繁殖データを用いてヒナの生死に気温、降水量、風速が影響するのかをGLMMを用いて解析した結果、降水量が多いほどヒナが死亡する確率が高まることが分かった。気温が高いほど死亡率が上がること、風速が強いほど死亡率が上がることも示唆された。また、ヒナの成長に同様の気象条件が影響するのかGLMを用いて解析した結果、降水量が多いほど跗蹠長は短く、体重は軽く、翼長は短くなることが分かった。さらに、ヒナは降水量の直接的な要因(低体温症など)で死亡しているのか、間接的な要因(栄養失調など)で死亡しているのかを、パス解析を用いて検討した。その結果、降水量が多いとヒナの体重が軽くなり、その結果ヒナが間接的に死亡していると考えられた。これらの結果から、リュウキュウコノハズクの繁殖は主に降水量から負の影響を受けていると考えられた。今後、気候変動によって繁殖期の台風や豪雨が増加するとリュウキュウコノハズクの個体群の維持に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。