| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-141  (Poster presentation)

圃場整備と耕作放棄が水田畦畔の植物-送粉者ネットワークと送粉サービスに与える影響
The effect of intensification and abandonment on plant-pollinator networks and pollination services in paddy fields

*冨田誠之, 平山楽, 丑丸敦史(神戸大学)
*Masayuki TOMITA, Gaku HIRAYAMA, Atushi USHIMARU(Kobe University)

今日では、様々な人間活動の影響によって生物多様性の減少や、種間の相互作用から成る生態系ネットワークの大きな変化を通じて、そこから得られる生態系サービスの減少が懸念されている。生態系サービスの中でも、送粉サービス(在来植物や栽培植物の結実等に必要な花粉を媒介する機能)は特に重要なものの一つとされており、その低下は多様性減少によって送粉ネットワーク構造がジェネラリスト化することに起因するとされつつある。日本の主要な農業生態系である水田においては圃場整備や耕作・管理放棄といった土地利用変化が動植物の多様性減少の主要因となっているが、送粉ネットワーク構造に及ぼす影響を研究した例は一例のみと非常に限られており、通年かつ広範囲でデータを集めて検証した研究は未だ見られない。また、土地利用変化による送粉ネットワーク構造の変化が送粉サービスに及ぼす影響については全く研究がなされてない。
本研究では、阪神地域の里山域に分布する水田を対象とし、伝統的に管理された水田(以下、伝統地)を6地点、圃場整備された水田(整備地)を8地点、耕作放棄された水田(放棄地)を5地点選定し、調査を行った。各調査地において、2 m×500 mのベルトプロットを設け、出現した開花植物と訪花昆虫の種名・個体数を記録し、4月から12月の間におよそ月に1回、年9回の調査を行った。調査データは春、夏、秋データに3分割して、解析に用いた。さらに、帰無モデルを用いて標準化した7つのネットワーク指標を算出し、調査地で20個ずつ採取した開花植物9種の柱頭に付着した花粉数を計数した。
伝統地に比べて整備地・放棄地ともに、全開花植物および送粉者の種数が有意に少なく、ネットワーク構造がジェネラリスト化し、在来多年生植物の柱頭付着花粉数は有意に少なかった。また、ネットワークのジェネラリスト化に伴って在来多年生植物への送粉サービスは低下する傾向が見られた。


日本生態学会