| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-143  (Poster presentation)

アカネズミのドングリ嗜好性に及ぼす甘味・渋味の影響
Effects of sweetness and bitterness on acorn preference in the large Japanese field mouse

*鳥羽真衣, 林文男(都立大・理・生命)
*Mai TOBA, Fumio HAYASHI(Tokyo Metropolitan University)

 植物とそれを食べる動物の間の相互作用として、植物の物理・化学的防御と動物の採餌行動の共進化があげられる。森林に生息するアカネズミApodemus speciosusは、森の中で様々な餌に出会うが、それらを無差別に食べているわけではない。本研究では、アカネズミの重要な餌資源であるドングリ類に含まれる成分に着目し、渋味成分であるタンニンなどのフェノール類を嫌い、甘味成分である糖類を好むかどうかを検証した。まず、タンニン酸塩、ブドウ糖の濃度が異なる4種類の人工飼料(どの成分も含まない、ブドウ糖を含む、タンニン酸塩を含む、ブドウ糖とタンニン酸塩の両方を含む)がそれぞれ入った4個の餌箱を毎日飼育ケージ内の同じ場所に配置した餌の選択実験と、それらの餌箱の位置を毎日ランダムに変えた選択実験を行った。アカネズミは、ブドウ糖を含む餌を好み、タンニン酸塩を含む餌を忌避した。餌箱の位置を日々変化させると選択性が弱くなることから、餌箱の位置の学習が選択性に関与することが明らかになった。次に、野外で集めた4種のドングリ(スダジイ、マテバシイ、コナラ、アラカシ)の選択性を野外で捕獲したアカネズミに対して調べた。その結果、スダジイとコナラが選択され、マテバシイとアラカシが忌避された。総フェノール濃度はアラカシで最も高く、ブドウ糖濃度はマテバシイで最も低かった。同じ選択実験を室内生まれのアカネズミ(ネズミ用飼料で飼育)に対して行った結果、初めて出会うにも関わらず実験開始時からドングリを運搬(貯蔵)した。摂食したドングリの選択性も野外捕獲個体と同様の結果となった。つまり、ドングリ類の持ち去り行動や選択的採餌にはある程度生得的な行動が関与していると考えられた。


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