| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-144 (Poster presentation)
昼行性訪花者の多くは、ヒトが感知できない320-400nmの波長の光(紫外線A波:UVA)を、色を構築する要素として利用している。しかし、花のUVA反射が訪花者に与える影響に関する研究のほとんどは、UVA反射の有無によって描かれた蜜標に対するハナバチかチョウの反応を調べたものに限られており、訪花者に対する誘引の効果を調べた研究は驚くほど行われていない。本研究では、パントラップを用いた野外実験を通じて、UVA反射の有無がハエ目とハチ目の誘引に及ぼす影響を調べた。調査は富山県立山の室堂周辺と長野県の菅平高原で、2021年5-10月に行った。パントラップは界面活性剤を入れたシャーレと色紙で作成し、色紙には以下5色(立山では4色)のいずれかを用いた:UVAを反射する白(W+)、UVAを反射しない白(W-)、UVAを反射する黄色(Y+)、UVAを反射しない黄色(Y-)、UVAを反射しない青(B:菅平のみ)。パントラップには計4385匹の昆虫が捕獲された。2840匹がハエ亜目(うちハナアブ科は7匹)、424匹がハナバチであった(社会性ハナバチの捕獲はなし)。立山でも菅平でも、ハエ亜目はW-で最も多く捕獲され、W+(またはB)で最も少なく捕獲された。この傾向は、10匹以上捕獲されたハエ亜目の科の、ほぼすべてに共通して見られた。しかし、同じハエ目のカ亜目を含め、他の分類群には見られなかった。ハナバチには、概ねW+, W-, BよりもY+, Y- で多く捕獲される傾向があった。ハナバチのどの科(コハナバチ科・ヒメハナバチ科・ミツバチ科など)も、Y-よりもY+で多く捕獲されたが、統計的に有意だったのは菅平のコハナバチ科のみであった。白い花の多くはUVAを反射しないが、雪や白い石など、無機物の白にはUVAを反射するものが多い。一方、黄色い花にはUVAを反射するもの、反射しないもの、反射の有無によって模様が描かれているものが存在する。これらを踏まえポスターでは、植物と送粉者の関係におけるUVAの働きについて議論したい。