| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-145 (Poster presentation)
ジャコウアゲハByasa alcinousの幼虫は,寄主植物であるウマノスズクサAristolochia debilisに対して,茎を環状に削り取る「環状剥皮行動」を示す.幼虫は「植物体内の栄養分や毒物質の移動を妨げ,栄養価や毒濃度を自身の摂食に適した状態にする,またはその状態を保つために剥皮する」という説が提唱されたが,未だ解明には至っていない.本研究では,ジャコウアゲハの体サイズとウマノスズクサ体内のC,N含有率について,非摂食株,被食株,被食+剥皮株の3群を剥皮の前後で比較した.また,野外環境における寄主植物の実態を把握し,幼虫が剥皮するウマノスズクサ株の特徴を探索した.
試験の結果,ジャコウアゲハの体サイズは群間で差がなく,幼虫の食餌量も変わらなかった.剥皮前のC,N含有率についても,群間で差がなかったことから,幼虫が餌の栄養価を感知して環状剥皮をおこなうか否かを決めている可能性は低いと思われる.また,本研究の結果から,寄主植物の師部の削り方や剥皮部に幼虫の唾液に含まれる化学成分などが付着せずとも剥皮の効果は得られたことから,そういった成分などによって誘引されるものでもない可能性が示唆された.