| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-147  (Poster presentation)

ニホンジカの被食圧:地形と季節
Sika dear browsing pressure: Topography and seasonality

*平山稜(横浜国立大学)
*RYO HIRAYAMA(Yokohama national university)

ニホンジカによる食害が日本全国で問題となっている。森林内のひとつの地域の中でもニホンジカの被食圧は、地形や季節などによって変化していると考えられ、被食圧の差により山域の中に植物種の局所的なレフュージアが形成されている可能性がある。本研究では被食圧が地形と季節によりどのように変化するかを明らかにすることを目的としている。調査は2021年春~2022年冬の各季節に静岡県及び神奈川県の山林4地域で、それぞれ10地点で食痕調査と地形の測定を行った。調査では、3m四方のプロット内で草丈20cm以上の植物に関して、種名と全体の本数、シカによる食痕のある本数を計測し、プロットの傾斜と岩・礫・土壌などの種類を記録した。それらのデータをもとに植物種の嗜好性とプロットの被食圧を求めた。地形、季節、地域個体群の違い、植物種数を説明変数、地点ごとの被食圧を目的変数とし重回帰分析を行ったところ、傾斜と基質、季節変化に関して有意な効果が見られた。特に傾斜に関しては、60度前後を境にそれ以上の角度になると急激に被食圧が小さくなることが示された。実際の調査でも、アオキやカンスゲなどの嗜好性の高い植物は崖上でしか発見されず、シカの侵入ができないため残存していると考えられる。したがって、嗜好性の高い植物はニホンジカの個体数増加を受けて、緩傾斜地では食べつくされてしまうが急傾斜地には残存し今後の植生回復のソース個体群になると考えられる。


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