| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-149 (Poster presentation)
ラン科の多年生草本サイハイランの送粉者はトラマルハナバチ女王とされる。本研究ではサイハイランを対象に、3年間の開花数調査とカメラトラップによる送粉者調査を実施し、開花数と訪花頻度の関係について検証した。調査は2019年~2021年の5月~6月に金沢大学角間里山ゾーンの広葉樹二次林にて行った。対象は2019年が16花序206花(平均13花)、2020年が26花序382花(平均15花)、2021年が52花序797花(平均15花)だった。カメラトラップにはLtl-Acorn6210を1花序1台設置した。カメラはセンサー感度がHigh、センサーが訪花昆虫を検知時に60秒の動画を撮影する設定とした。また、直接観察により、4日間隔で各花序の開花数と個花の花粉塊の有無を記録し、開花終了後、結果数を計数した。2019年は、訪花者による花粉塊の持ち去りは確認できず、果実は実らなかった。2020年と2021年では、トラマルハナバチ女王が訪花し、花粉塊が付着した個体が訪花した花序のみが結果した。訪花頻度は、2020年は26花序中5花序で計11回(平均2回)、2021年は52花序中50花序で計385回(平均13回)であり、2年間で大きく異なった。2020年は開花ピークから10日ほど遅れて訪花ピークがみられたのに対し、2021年は開花ピークと訪花ピークが一致していた。また、2020年の結果数は5個(結果率1.0%)に対し、2021年は228個(結果率28.7%)と多くの果実が生産された。しかし、2021年の果実の多くは成熟途中で腐敗し、最終結果率は1.8%だった。3年間の結果数の違いの原因を調べるため、応答変数を花序ごとの結果数、説明変数を年、花序ごとの訪花頻度、花序ごとの開花数としたGLMM解析を行った。その結果、年の効果が最も強く(P<0.001)、果実生産には年変動がみられた。本調査地のサイハイランの有効な送粉者はトラマルハナバチ女王であり、その訪花頻度が高いと結果率は高くなった。しかし、最終的な結果率はランミモグリバエなど、種子食昆虫に強く影響されることが示唆された。