| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-151  (Poster presentation)

送粉者相の違いが開花密度-繁殖成功関係にもたらす影響
Effects of pollinator composition on floral density-reproductive success relationships

*佐藤秋周(神戸大学), 中田泰地(神戸大学), 川上風馬(神戸大学), 村上渚(神戸大学), 朝田愛理(神戸大学), 増田祐季(神戸大学), 大谷素司(神戸大学), 白鳥裕太郎(富山大学), 石井博(富山大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Akinari SATOH(Kobe Univ.), Taichi NAKATA(Kobe Univ.), Fuma KAWAKAMI(Kobe Univ.), Nagisa MURAKAMI(Kobe Univ.), AIRI ASADA(Kobe Univ.), Masaki MASUDA(Kobe Univ.), Motoshi OTANI(Kobe Univ.), Yutaro K SHIRATORI(University of Toyama), Hiroshi S ISHII(University of Toyama), Atsushi USHIMARU(Kobe Univ.)

被子植物の多くが動物に送粉を依存し、送粉者に適応した花形態の多様化が起こり、皿状の放射相称花のような単純花から左右相称花や花筒花などの複雑花が進化してきたと考えられている。複雑花はその花形態に適応した特定の送粉者(スペシャリスト)に送粉を依存するものが多いとされている。花形態の複雑化による送粉者のスペシャリスト化は、花構造の生産や維持により多くのコストがかかることが指摘されている一方、このような花形態がより適応的となる生態的条件についてはいずれの研究においても決定的な結論は得られていない。一般的に、植物は自種開花密度が低い環境では、訪花頻度が減少したり、他種による繁殖干渉を受けたりしやすい。そのため、スペシャリスト媒は低密度下におけるこれらの送粉成功を低下させる要因の影響を受けづらいと予測されているが、このことを定量的に検証した研究はまだない。本研究では、送粉者を限定する複雑花は自種開花密度の低い環境下において繁殖に適応的であるという仮説を立て、検証を行った。具体的には、花筒花や左右相称花をつけ特定の送粉者に訪花される花を複雑花とし、皿状の放射相称花をつけ多様な送粉者に訪花される花を単純花とし、複雑花及び単純花各4種について自種・他種開花密度が送粉者の訪花頻度と受粉成功に与える影響について調査し、花形態間で比較を行った。研究の結果、複雑花では自種・他種開花密度が送粉者の訪花頻度や受粉成功に影響しないことが分かった。一方、単純花では自種開花密度の増加に伴い受粉成功が促進され、他種単純花開花密度の増加に伴い受粉量が減少することが明らかになった。これらの結果を基に、複雑花が送粉者のスペシャリスト化により開花密度に影響されない安定した繁殖を行うメリットを持ちうることを議論する。


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