| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-152 (Poster presentation)
植物にとって鳥類は主要な種子散布者であり、果実の色は鳥類が果実を認知する際の重要なシグナルである。果実の色の適応的意義を説明する仮説の一つに、鳥類が特定の色を好むことが報告されているが、実験的研究は乏しい。さらに、鳥類は4色型色覚をもつため、紫外線領域を含めて果実の色を評価する必要がある。本研究では、① 日本産の被食散布型植物の果実の色を、紫外線領域を含めた光反射スペクトルから再評価すること、② 結実木に訪れた鳥類の採食行動から、鳥類の果実の色に対する嗜好性を探ること、③ 異なる色の果実を同時に提示する野外実験により、鳥類の果実の色に対する嗜好性を検証することを目的とした。① 各地から木本、草本、つる植物を含む281種の果実を採集し、果実が反射する300~700nmの分光スペクトルの値に基づきクラスター分析を行った。その結果、黒色系と赤色系の果実が多く見られた。また、黒色系の果実は、紫外光の反射の有無により2つのカテゴリーに分類できた。② 野外観察の結果、赤色の果実に比べて黒色の果実が好まれることが示唆された。そこで、③ 野生果実と人工果実を用いて野外実験を行った結果、十分なデータが集まった全ての鳥類種(メジロ、ヒヨドリ、ウグイス)で異なる色の果実の選択に有意差がみられ、鳥類が果実の色の嗜好性を持つことが示された。これは、鳥類の嗜好性が果実の色に対する一つの選択圧になることを示唆するものである。ただし、黒と赤のどちらをより好むのかは種によって異なったことから、鳥類は種によって異なる色の果実を食べることにより共存している可能性がある。また、紫外線を反射しない黒色の果実よりも紫外線を反射する黒色の果実が選ばれる頻度が有意に高かったことから、鳥類が紫外線領域の反射光を採餌のシグナルとして利用することが明らかになった。